【視察のアテンドを行いました】日本の中小企業とフィジー双方の未来と可能性

先日、一般社団法人中小企業戦略研究所の中村暉梨さん(ひかりさん)を視察にお迎えし、フィジーの現在地を多角的に捉える3日間のアテンドプログラムを実施しました。

美しいリゾート地としての側面に隠された雇用のリアル、教育現場や低所得者層が抱える課題、そして現地で力強く生きる人々の熱量に触れ、私たちが今後どのようにこの国と関わっていくべきかを再考する機会となりました。

本記事では、その視察の様子を時系列に沿って詳しくレポートします 。

目次

1日目:文化への敬意から始まる旅・観光産業の裏側に流れる「リアルな雇用」

早朝、ナンディ国際空港に到着されたひかりさんをお出迎えし、そのまま最初の目的地であるデナラウ島へと向かいました 。

フィジーの「表」側、観光地デナラウ島

現地でのコミュニケーションにおいて最も大切なのは「現地の文化や伝統への敬意」です 。そのため、まずはショッピングセンターの衣料品店でタパ柄の服を購入していただきました。タパ柄の衣服を身にまとう姿勢は、現地の人々から文化の尊重として非常に好意的に捉えられ、温かく歓迎されるきっかけとなります 。
デナラウ島は美しい観光地であり、まずは多くの人が想像するフィジーの表の姿を感じていただきました。

ホテルへの営業およびヒアリング

その後、五つ星ホテル2件へのヒアリングを通じ、若年層のキャリアパス、トレーニングプログラムがどのように地域雇用を支えているかといった、観光産業の裏側に存在するリアルな労働環境について知見を深めました。

  • ホテルA
    人材マッチングアプリ「Haruharu」の営業に同行し、若者の就労機会を支えるサービスの導入提案を行いました。人事責任者は顧客対応中のため惜しくも会えなかったものの、インターンスタッフのMasaが人事スタッフに対してサービス概要を直接説明しました。
    周辺のホテルでは既に本サービスが導入され、アンバサダーになっている店舗・施設もあるなど、現地でのネットワークが着実に広がっていることを実感しました。
  • ホテルB
    以前から交流のあったスタッフにヒアリングを行いました。わずか2年で人事責任者のポジションを獲得した21歳若手ホテルスタッフのストーリーからは、いかに優秀な人材であっても経済的理由で専門学校や大学を中退せざるを得ないケースが多々あることや、フィジーにおけるトレーニング環境の重要性が感じられました。

ローカルの日常を肌で体感する

午後は一転して、ナンディのローカルな街並みへと飛び出しました。ローカルな体験をしたいというご要望があったため、地元の食堂でよくみられる中華・インド料理である「チョプシー」のランチを楽しんだ後、活気あふれるマーケットやハンディクラフトマーケットを街歩きしました。お土産の購入を済ませた後は、観光客用の移動手段ではなく、現地の人々が日常的に使う路線バスに乗り込んでラウトカ市へと移動するという、ローカル体験をしていただきました。

この日の夜からは、ラウトカにあるインド系のホストファミリー宅に滞在し、手作りのディナーを囲みながらフィジーのリアルな生活空間に深く浸る時間を過ごしました。

2日目:行政や施設との対話から、持続可能な支援の在り方を考える

2日目は、政府機関とのディスカッションや、フィジーの深刻な社会課題の現場を視察し、持続可能な支援の在り方を模索しました

Ministry of Youth and Sports(若者・スポーツ省)訪問

午前中は、15〜35歳の若年層を管轄し、農業や雇用など分野横断的な支援を行う「若者スポーツ省(Ministry of Youth and Sports)」を訪問し、責任者のナイル(Nile)さんにお話を伺いました 。

現在、フィジーの若者の失業率は約18%に達している一方で、企業側は深刻な人手不足に悩まされているというミスマッチが起きています 。今後の支援についてヒアリングしたところ、「単に物資や金銭を一方的に与えるのではなく、スキル習得や教育プログラムを通じて、彼らが将来的に自走(自立)できる仕組みづくりこそが必要だ」という、本質的な示唆をいただきました 。

若者スポーツ省にて、左から
ひかりさん、ナイルさん、川上(SIF代表)
若者スポーツ省(Ministry of Youth and Sports)

MSME(組合を管轄する省庁部門)オフィスへのアポなし訪問

ナイルさんから近くに組合を管轄するオフィスがあると教えていただき、近隣にある組合・中小企業支援の管轄窓口「Co-Operative オフィス(MSMEs FIJI)」へアポなしでの訪問を試みました 。突然の訪問にもかかわらず責任者の方と面会でき、現地の組合制度や補助金設計について貴重な情報を得ることができました 。

フィジーでは立ち上げ初期の補助金はないものの、申請手続き自体は日本よりも格段に簡素であり、同オフィスが申請から運営まで親身に伴走支援を行っています 。しかし、広大な西部エリアをわずか6名のスタッフでカバーしているという深刻な人員・機材不足のリアルも目の当たりにしました 。

低所得者居住区「コロイピタ」の課題と現状

午後には、タプーシティでローカルフード「rourou-lumb:ラムのタロ芋の葉スープ煮」の昼食をとった後、低所得者層向けの自立支援居住区である「コロイピタ(Koroipita)」を訪問し、現地で活動するJICAスタッフからお話を伺いました 。

居住区への入居待ちリストが存在するほど生活困窮者の現状は厳しく、多くの人々がギリギリの生活を送っています 。中には、親の病気や経済的理由により、毎日のバス代やお昼ご飯代が払えず、学校に通うことすら困難な子どもたちがいるという現実があります 。また、貯蓄をしない国民性や、治安・犯罪への警察の対応の鈍さなど、現地特有の根深い生活課題についても解像度を上げる機会となりました 。

Vunato地区のゴミ山視察

続いて、ナンディや近隣地域からすべての廃棄物が集まるゴミ山(最終処分場だがゴミを積み上げているにとどまる)を視察しました 。近年始まったペットボトルの回収や、生ゴミをコンポスト化して肥料として販売するリサイクルサイクルについて説明を受け、現場で働くウェイストピッカー(ゴミ山の中での廃棄物回収で生計を立てる人々)から直接話を聞きました

彼らはチームを組んでお金になる素材を集めており、本気で取り組めば1日あたり約100ドルを稼ぎ出すことも可能といいます 。これは現地の最低賃金(時給約5ドル)を大きく上回る額であり、ゴミ問題という社会課題の中にも、たくましい経済活動が行われていることを学ぶ貴重な視察となりました 。

一面に広がるごみ山。
フィジーに焼却施設はなく、ただ積み上げるだけとなっています。
近年始まったペットボトルリサイクルと生ゴミのコンポスト化。
仕組みが回りはじめています。

1日の終わりには、SIF代表宅で、JICAスタッフも交えたフィジースタイルのBBQを開催しました 。自分たちで釣った新鮮な魚の刺身などを囲みながら、昼間の重厚な視察内容について遅くまで熱いディスカッションが交わされました 。

なぜかフィジーで安価な牛タンと、
2日前に釣った魚を焼きます。

3日目:教育現場の最前線と、ものづくりを通じた「共創」の芽

最終日は、地域に根差したエンパワーメントの現場を巡り、具体的な未来のプロジェクトへの種まきを行いました 。

現地の女性職人との製品開発(共創)

まずは再びコロイピタを訪れ、現地の職人であるリサ(Lisa)さんを訪問しました。事前に私たちが渡していた布をもとに作られた縫製品のテスト商品を回収したところ、非常に良い仕上がりとなっており、技術力の高さと感性が感じられる仕事ぶりに感銘を受けました 。

その品質を確認したひかりさんから、現地仕様の伝統服であるブラシャツの発注をいただくなど、マイクロビジネスの芽が形になり始めています

ヴィトンゴ地区学校(Vitogo District School)での教育視察 

次に、1〜8年生(日本の小中学校に相当)が通う歴史ある村の学校「Vitogo District School」を訪問し、フィジー系の非常にフレンドリーな校長先生から教育現場のリアルな課題についてお話を伺いました

かつては授業中に廊下を徘徊する生徒がいるなど荒れていた時期もあったといいますが、現在はコントロールされた環境が整えられています。校長先生は「子どもたちが将来、犯罪の道に走らないようにするためには、規律を重んじ根本的なモラル教育を行うことが何よりも重要だ」と熱弁されていました。

また、フィジーでは英語が第二言語であるため、英語の習得度が他のすべての教科の成績に直結し、英語が苦手な子どもたちが強いコンプレックスを抱きやすいという課題もあるそうです。過去には誰でも進級できた制度から、現在は小学校でも留年制度が導入されるなど、教育環境は大きな変革期にあります。
ここでも、悪天候や経済的事情(お昼ご飯を持参できないなど)、妹や弟の世話で通学できない子どもたちの存在が指摘されました 。

お話の後、「ついでにランチを買ってきてほしい」と校長先生から気さくに頼まれるというフィジーらしい一面にクスリとさせられつつ、購入後に学校へ戻り、毎週金曜日に行われるスポーツデーに参加しました 。グラウンドで子どもたちと一緒に遊び、語り合うことで、フィジーの未来の宝である彼らのまぶしい笑顔に触れることができました 。

当日は「スポーツデー」とのことで、
午後子ども達は下校まで校庭で遊びます。
元気すぎる子ども達に囲まれるひかりさん。

視察の締めくくりと温かいホスピタリティ

夕方、ラウトカの街にある布屋に立ち寄り、ひかりさんがリサさんに発注したブラシャツ用の布とボタンを購入しました 。(オーダーメイドのブラシャツは縫製に1週間程度かかるため、SIFスタッフが後日リサさんに布を渡し、完成品を回収します。)その後近くの美しい海辺を歩きながらバードウォッチングを楽しみ、カフェで休憩をとりました。

ひかりさんはホストファミリーの家に戻り、パッキングを済めてお別れの挨拶をした際、「これからみんなで最後のディナーに行く」と伝えたところ、ホストファミリーから「それなら、しっかり腹ごしらえをしてから行かないとね!」と、なぜか山盛りの一食分のご飯を出されるという、フィジーならではの過剰で愛おしいホスピタリティの洗礼を受けたそうです(笑) 。

謎のおもてなしにより、この日ひかりさんは夕食を2回食べることに……

旅の最後は、空港近くのホテルレストランにて、遅れて合流したメンバーも交えてフィジー料理を中心としたラストディナーを共にしました 。
空港のゲート前で、フィジー語で「また会いましょう」を意味する「Sota tale(ソタ・タレ)」の言葉とともに記念撮影を行い、ひかりさんは笑顔で帰国の途につかれました 。

総括:Social Innovation Fijiが目指すこれからの展望

今回のひかりさんの3日間の視察を通じて、私たちはフィジーのポテンシャルと課題の双方を改めて深く認識することができました 。

観光産業の裏側にある若年層の雇用課題、教育現場が抱える構造的な問題、そして低所得者層の生活の厳しさ、若者たちと企業との間に明確なミスマッチなど、フィジーには様々な課題が存在しています。しかし同時に、組合といった行政の支援枠組みや、ウェイストピッカーの経済活動、リサさんのような職人の技術力に見られる現地の人々の力強さと高いポテンシャルも、今回の視察を通じて確かに感じ取ることができました。

今回の視察では、訪問先の担当者から次の訪問先を直接ご紹介いただき、その場でアポイントなしの訪問が実現するなど、現地ならではのスピード感のある連携も多く生まれました。今回の期間内では具体的な成果に至らなかったものの、今後の関係構築につながりそうな種まきができた訪問先も複数あります。あらかじめ決めたスケジュールに固執せず、現地の状況やご縁に応じて柔軟に訪問先を組み替えていくという、SIFならではのアテンドスタイルも、今回の視察を通じて改めてその有効性を実感しました(臨機応変な現場対応は、実はSIFでは頻発していたので当然のことと思っていましたが、ひかりさんにご指摘いただき強みと認識できました)。

こうした課題に対し、私たちSocial Innovation Fijiは、単に金銭や物資を提供する依存型の支援ではなく、日本の中小企業が持つ優れたマーケティング、デジタルスキル、ものづくり等のノウハウを「教育コンテンツ(eラーニングなど)」や「トレーニングプログラム」として現地にインストールしていく仕組みを構築しています。現地での伴走支援と、拡大可能性を併せ持ったソリューションを掛け合わせることで、フィジーの若者たちが経済的に自立し、国としても発展していける未来を、日本のパートナー企業の皆様と共に「共創」してまいります。

もちろん、このアプローチが価値を持つのはフィジー側だけではありません。フィジーは人口約90万人と市場規模が小さいため、大企業が参入しにくい一方で、日本では当たり前に存在する「eラーニング」や「採用アプリ」といったデジタルコンテンツ、「肥料」といった基本的な概念存在自体がまだ広く知られていない領域も多く、中小企業がノウハウを生かして十分に活躍できるフィールドが広がっています。さらにフィジーは南太平洋諸国最大の国であり、東南アジア各国からも近い立地にあります。フィジーを最初のフィールドとして周辺国へと展開していくビジョンも、今後の可能性として十分に考えられるのではないでしょうか。

ひかりさん、はるばるフィジーに視察に来てくださり、本当にありがとうございました!

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