【SDGs 17の目標の取り組み集大成】アース・オーバーシュートデーとSDGsの関係を分かりやすく解説

皆さんはアース・オーバーシュート・デーをご存知でしょうか。

SDGsやESGが盛り上がりを見せる昨今、耳慣れない難しい単語も増えてきました。

でも今回のアース・オーバーシュートデーは、難しい概念ではなく、考え方自体がとても面白いので知っていただきたいです。

この記事を読んでいただければ、アース・オーバーシュートデーとは何なのか、SDGsとはどのような関係なのかを知ることができます。

目次

アース・オーバーシュート・デーはSDGsの集大成

まずはアース・オーバーシュート・デーを初めて聞いた!という方のために、概要をご説明します。

アース・オーバーシュート・デーとは何なのか

アース・オーバーシュート・デー Earth Overshoot Day とは、その年の人類の資源やサービスに対する需要が、その年に地球が生産できる資源やサービスの量を超える日のことを言います

計算方法はやや複雑ですし覚える必要はないですが、以下の式で計算されています。

(地球のバイオキャパシティ/人類のエコロジカルフットプリント)×365=地球オーバーシュートデー

つまり1月1日から起算して、何日目に地球の資源の量を人類が使い果たすか、という計算を分かりやすくするために日付で表現しているのです

7月29日

これが2021年アース・オーバーシュート・デーの計算結果です。

皆さんのイメージと合うでしょうか。

そんなに早いの!?と思われた方も多いのではないかと思います。

事実、この指標は毎年早まっています。

過去の推移は後ほどご紹介しますね。

ところでアース・オーバーシュート・デーの取り組みは、国際NPO-グローバル・フットプリント・ネットワークという団体が主催し毎年発表しています。

ではアース・オーバーシュート・デーは何のために毎年発表されるのでしょうか。

アース・オーバーシュート・デーの目的

アース・オーバーシュート・デーの目的とは、私たちの1年の消費と地球の生産を比較し、私たち自身が環境に与える影響を軽減することの重要性を伝えることです

だからこそ、サイトには個人のフットプリントを減らす方法について詳しく紹介されています。

また、自分のEarth Overshoot Dayへの貢献度を知りたい方は、自分の影響力を計算するツールも用意されています。

この計算式に出てくるエコロジカル・フットプリントとは、どれほど人間が自然環境に依存しているかを、わかりやすく伝える指標です。

人類が持続可能な生活を送るのに必要になる面積と表すことができ、地球◯個分という風にインパクトのある伝え方も可能です。

一方で、バイオキャパシティという考え方も知って頂けると良いかも知れません。

これは生物生産力とも言われ、自然が光合成によって提供してくれる生態系サービスの容量です。

つまりエコロジカル・フットプリントがバイオキャパシティを下回れば、人類と地球は持続可能な活動をしていることになります。

他にも、世界各国の影響力であったり、もし全ての国がアメリカだったら地球が5個必要、という具合にそれぞれの国・個人にシンプルな表現で比較をしています。

アース・オーバーシュート・デーとSDGs 17の目標との関係

このように計算されたアース・オーバーシュート・デーは、直近50年は全て12月31日以内、つまり必ず消費が生産を超過し”負債”を生み続けていることを意味しています

言い換えると、私たちは予算を大幅に超過し、負債はさらに増え続けているのです

この負債とは生態学的な負債であり、食糧不足、土壌浸食、大気中のCO₂の蓄積など、増大する負債の利子には壊滅的な人的・金銭的コストがかかっているのです。

SDGsで掲げられた17の目標では、人類の消費をいかに減らし、負債を生まない仕組みにしていくかが焦点です。

それに対してアース・オーバーシュート・デーとは世界が取り組むSDGsの集大成であり、答え合わせでもあるのです。

アース・オーバーシュート・デーの過去の推移

過去の推移を見てみると、1970年には12月30日とほぼ1年間の生産と消費が一致していました。

しかしその後は徐々に早まり、もうすく半年で消費が生産を上回ってしまいます。

ちなみに2020年のアース・オーバーシュート・デーは2020年8月22日、日本単独のアース・オーバーシュート・デーは2020年5月12日でした。

なんと日本は、世界全体よりも3ヶ月も早く資源を使い切ってしまう生活をしているのです

だからこそ僕たち日本人一人一人が、SDGsの取り組みを実践していくことが大きな意味を持ちます。

ここからはグローバル・フットプリント・ネットワークの記事をもとに、SDGsのそれぞれの目標がどのようにアース・オーバーシュート・デーと関連するのか見ていきましょう。

アース・オーバーシュート・デーを後退させるSDGsの取り組み

アース・オーバーシュート・デーとSDGs目標はどのような関係にあるのでしょうか。主要な目標との関係を紐解いていきましょう。

SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に向けた取り組み

人類のエコロジカルフットプリントのうち、炭素成分を50%削減できれば、地球1.6個分の資源消費を1.1個分にすることができます。

これは、「オーバーシュート・デー」の日付を93日(約3カ月)も後にずらすことに相当します。

グローバル・フットプリント・ネットワーク社とシュナイダーエレクトリック社の研究者は、既存の設備を改修することで、人間の快適性や経済的生産性を損なうことなく、環境面と経済面でのメリットを得られるとしています。

産業分野全体で、最も資源消費の少ないアプリケーションや消費方法が採用されれば、その効果は計り知れません。

この取り組みは、世界のエネルギー構成に占める再生可能エネルギーの割合を大幅に増加させることにも繋がっていきます。

SDGs目標2 「飢餓をゼロに」に向けた取り組み

地球の生態系容量の半分は、私たち人間を養うために使われています。

その一方で食糧の充足、栄養失調、飢餓の問題に取り組む際には2つの大きな課題があります。

食料生産における資源の非効率性

動物を生産するために消費されるカロリーは、植物のそれに比べて著しく多いです。

この事実を受け、中国政府は2030年までに肉の消費量を50%削減することを約束しました。

その効果は、人類のエコロジカルフットプリントが地球上で3億7700万ヘクタール縮小し、オーバーシュートデーの日付が5日後ろにずれるとグローバル・フットプリント・ネットワークは計算しています。

また、現在の農業は化石燃料を大量に消費しています。

例えば、ベルギーでは1キロカロリーの肉を提供するために5キロカロリーの化石燃料が必要という研究結果があります。

このように世の中にはまだまだ、食糧生産における資源の非効率が残っており、僕たちに出来ることはたくさんあります。

食品廃棄物

国連食糧農業機関によると、人間が消費するために世界で生産される食料の約3分の1(毎年13億トン)が失われたり無駄になったりしています。

また、これはあまり知られていませんが、高所得国と低所得国ではほぼ同量の食品が廃棄されています

これは、スウェーデンとコロンビアを合わせたエコロジカルフットプリントの総量や、ボリビアのバイオキャパシティの総量に相当します。

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」の目標の一つは、2030年までに、小売店や消費者レベルでの一人当たりの世界の食品廃棄量を半減させること、また収穫後の損失を含む生産・サプライチェーン上の食品ロスを削減することです。

世界の食料廃棄量が半分になれば、オーバーシュートの日を13日も早めることができるそうです。

また、海外からの食料に依存する国が増えていることももう一つの問題です。

食料生産のグローバル化は、地球全体の効率化には効果があるかもしれません。

その一方で、このような国は食料ショックに対して最も脆弱であり、有事の際に自国の生産に頼ることが出来ず、食料システムの回復が遅れる可能性があります

SDGs目標 「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさを守ろう」に向けた取り組み

農場、森林、公園、湿地帯、湖、そして海はすべて人類の生命維持装置のように生命を支えています

肥沃な土、きれいな水、きれいな空気は、人類が繁栄するために必要な食料と身体の健康を提供するために必要不可欠です。

また、海や森などの生き生きとした生態系は二酸化炭素の吸収など、地球の住みやすさを維持するためにも必要なものです。

さらに、この生態系は人間の心理的、精神的な安定にも役立っています。

地球上の生物資源が大量に使い尽くされている現在、私たちの経済は地球の生態系容量に制限されているのが現実です。

現在、そして未来の私たちを支える健全な地球を実現するためには、人間の消費を減らし、地球の生命維持システムを改善する必要があります

そして幸いなことに、生態系の健全性を高め、地球の資源再生能力を高める解決策はすでに存在します。

これには三つの方法があります。

一つ目は野生の空間、特に生物多様性のホットスポットを保護・保全するための取り組みです。

二つ目は過剰に利用され過ぎ疲弊してしまった生態系の修復です。

三つ目は再生可能な農業と持続可能な漁業です。

人類を養い続けるためには、土壌の生産性、水循環、遺伝子の多様性を維持し、汚染を回避する農業の方法を見つける必要があります。

また、持続可能な漁業も重要な要素です。

持続可能な漁業は、海全体の健全性を支え、海が次の世代に受け継がれることを可能にします。

特に低所得国では、約30億人が主なタンパク源として水産物に依存していますのでこの効果は絶大です。

SDGs目標11 「住み続けられるまちづくりを」に向けた取り組み

2050年には、全人口の70〜80%が都市部に住むと予想されています。

そのため、人間の過剰な需要を回避するためのスマート都市計画と都市開発戦略が急務です。

例えば、エネルギー効率の高い建物、コンパクトな都市、公共交通機関の効果的な利用などが挙げられます。

また交通機関についても、私たちの自動車の必要性を左右する上で大きな役割を果たします。

ちなみに個人の移動手段は、人類のカーボンフットプリントの17%を占めると計算されています。

SDGs目標5 「ジェンダー平等を実現しよう」に向けた取り組み

国連は、2100年までに73億人から156億人が地球上に住むと予測しています。

人類一人一人のフットプリントにはばらつきがありますが、人口が増えれば地球への負担も大きくなります

また有事の際にいち早くネットワークを構築し、相互援助の体制を作り上げられるのは、家計を担う女性たちです。

女性や少女、ジェンダー平等を目指すことは人類と地球にポジティブな影響を与え、それ自体に高い社会的価値があります。

生態系への影響はゆっくりですが、長期的には大きなインパクトがあります。

ご存知のとおり、人口というのはタブーや偏見、そして悲惨な歴史を持つデリケートなテーマです。

人口の話題を取り上げるだけで、持続可能性の話から離れていってしまうことも少なくなりません。

でも一方で、人口に関する話題を避けていては、地球に対する需要を増大させている最も重要な原因を解決することはできません。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

2021年7月29日は、史上最も早い地球オーバーシュート・デーとなる計算です。

これは私たちがすでに地球の天然資源を生成するよりも早く使い果たしてしまうことを意味します。

ただし、僕たちの生活の中の食事や移動手段を少し変えるだけで、地球オーバーシュートデーの日に大きな変化をもたらすことができます。

我々SIFが関わっているフィジーという国は、規模も小さくその環境保全のインパクトはグローバルに見れば非常に小さなものです。

それでも彼らの画期的な取り組みが、各国に影響を与え広がっていくことで大きな効果になります。

同じように僕たち一人一人の活動も、直接的な効果は小さくてもどこかで繋がって大きな効果をもたらすことが出来るかも知れません。

そんなSIFの活動については、こちらの記事に紹介しています。

幸福度No1の国、フィジーに、SDGsにつながるメディア。”Social Innovation Fiji Journal”とは

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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参考:

https://www.footprintnetwork.org

https://myethicalchoice.com/journal/sustainable/ecological-footprint/

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