グローバルな世界になっていく中で、海外に行ってみたい!海外進学、留学してみたい!と考える人は多いのではないでしょうか。
しかし、やはり日本を離れて海外で暮らすとなると不安を感じて、留学を遠いものだと思う方もいると思います。
私は、4歳から7歳をアメリカで過ごし、帰国後も中高から大学の現在まで、アジアや欧米など様々な国籍を持つ人と接するインターナショナルな環境で勉強をしています。アメリカに行ってすぐの時は、右も左も分からない状態でした。言葉がわからない、考え方が違いすぎる、などたくさん不安を感じたことは鮮明に覚えています。
しかし、そういった不安は小さな意識で変わっていくものです。そこで、今回は私自身の海外経験を元に、海外で暮らすときのポイントを紹介していきたいと思うので、少しでも留学してみたいけど怖い、どうコミュニケーションを取ったらいいかわからない、そんな方は続きを読んでみてください!
多くの学生が感じる海外生活の最大の不安、「価値観の違い」を乗り越えるには?
価値観の違いは慣れていないと大きな壁のように感じてしまうかもしれません。この壁にあたり、周りの人との衝突や孤独を体験すると、自分を相手から守るために攻撃的になったり、頑固になったりと、視野が狭くなってしまう可能性があります。私も考え方が合わず、アメリカで暮らし始めた頃は、馴染もうと必死に他人が言ったことにすぐに同意し、自分の意見を言いませんでした。
しかし、これでは良い関係は築けませんし、コミュニケーションも満足のいくものにはなりませんよね。そこで出てくるのが「アサーティブ・コミュニケーション」です。
アサーティブ・コミュニケーションとは
アサーティブ・コミュニケーションとは、人材育成用語で、相手敬いながら自己表現を行うことです。例えば、自分にとって都合の悪いことがあった時、嫌な気持ちを抑えて承諾したり、逆に反抗したりするのではなく、相手の気持ちや立場を考えた上で、冷静に自分の考えも伝えることです。アサーティブ・コミュニケーションが上手くなることは価値観の違いを乗り越える上で大切です。なぜなら、自分の欲求や意見を押し殺すのでも、ぶつけるのでもないコミュニケーションスタイルをとることで、相手と信頼関係が築けるからです。
アサーティブ・コミュニケーションが得意になることには、様々な利点があります。
- 相手にも自分にもウィンウィンな状況を作り出せる
- 相手と公正な関係を築ける
- 自信や自尊心を得られる
- チームワークを向上させる
など、アサーティブ・コミュニケーションができることで、他者とコミュニケーションをとる際に、自分の気持ちを相手に伝わりやすくするだけでなく、自分も相手もストレスを少なくすることができます。私自身、アメリカの学校でグループワークをするとき、プレゼンの分担をアサーティブ・コミュニケーションを意識し、公平にプレゼンなどの担当箇所を話し合うことで、自己主張の激しい人が多い中で相互理解を図ることができました。
アサーティブ・コミュニケーションではないもの
- 攻撃的
これは相手の気持ちや立場、意見を無視し、自分の意見や要求を押し付けるタイプです。例えば、自分の思い通りにならないと、不機嫌になったり暴言を吐いたりする態度です。このコミュニケーション方法は価値観の違いは乗り越えにくいでしょう。なぜなら、自分の見方を押し通してしまうと、相手を不快にして離れられてしまうからです。
- 受身的
自分で主張はせず、ひたすら相手の話に合わせてしまうタイプです。このスタイルも価値観の違いは乗り越えにくいです。なぜなら、自分を押さえ込み、無理のある頼なども聞き入れてしまうため、相手と対等な関係が築けないからです。対立を避けるために言い訳をしたり、自分を上手く表現できないため、ストレスを溜めてしまうかもしれません。
- 作為的
この三つ目は面と向かっては意見を言わず、裏工作をするタイプです。これは上記と同じように、アサーティブ・コミュニケーションではありません。なぜなら、表は合わせていても、裏で悪口を言っていては、対等な関係を築けないからです。
アサーティブが得意になるには
上記のアサーティブではない例では、いずれも「相手に負けたくない」(攻撃的)、「嫌われたくない」(受身的)、「面と向かって話すのが面倒だ」(作為的)、といった自己中心的な考え方が入っています。
そのため、アサーティブ・コミュニケーションが得意になるには、自分の意見に自信を持つことが大事です。なぜなら、自分自身に満足していないと、外部からの承認に依存してしまう可能性があるかです。例えば、自分に自信が持てないと、周りから褒めて欲しい、認めて欲しい、と考えることがあります。しかし、自分が自身に対して満足していないと、いくら周りから高い評価をもらっても、不満は解消されません。
そこで、私が海外で実践してうまくいった、アサーティブ・コミュニケーションのコツを紹介したいと思います。
- 否定から入らない
まず、何事も決めつけたり、否定したりしないことが大事です。なぜなら、物事を決めつけてしまうと、それ以上相手を理解しようとしなくなるからです。
個人的な経験上、アメリカではお互いの話を大きなリアクションで聞き合うことが多くありました。一度ホームステイをしたとき、ホームステイ先の家族はとても人懐っこく、話すのが好きな人ばかりでした。そこで、相手の話に「Wow」などとリアクションを取りながら、質問をして話を広げると仲が深まった記憶があります。
- 謝りすぎない
礼儀正しくすることは大事ですが、自分を下げすぎるのはよくありません。それは、見下されて良いように利用されてしまう可能性があるからです。
自分に自信がなく、対立を避けようとしすぎると、受身的になってしまいます。私もアメリカで、ついグイグイ自己主張をする人の中で萎縮してしまい、周りに流されていた時がありましたが、勇気を出して自分の意見を言ってみたら、もっと聞かせて、と興味を持ってくれた経験がありました。そのため、周りに押されていると感じたら、自分も発言してみようと心掛けると良いと思います。発言は質問でも、コメントでもいいんです。一方的に流されないようにする心掛けが、自信につながります。
- 話の中に「私は」を入れる
「私は」を使うことで、相手に話が伝わりやすくなります。なぜなら、発言から曖昧さを取り除くことができるからです。
例えば、「どうして時間を守ってくれないんだ」と責めてしまうと、自分の感情に任せたきつい発言に、相手も自分を守ろうと攻撃的になると思います。そこで、「私は、あなたと時間を有効に使いたいから、もっと早く来てくれないか」と言ってみると、自分の言い分が伝わりやすくなります。
不安になったら、内省をしてみる
もちろん、アサーティブなコミュニケーションの力も、自信も、急激に身につくものではありません。私も自分に自信がある方では無いのですが、少しずつ上記のことを意識しています。例えば、罪悪感を覚えたら、まず自分が悪いのかを考えるようにしています。一つ一つの意識がうまく行ったとき、少しずつ自信がつくのだと思いますし、自分にそっとフォローを入れると余計なストレスを溜めることが減るのではないでしょうか。
そして、場合によっては自分を抑えなければならないこともあると思います。ですので、柔軟に状況に対応することも大事です。次は、まさにここで出した、「状況」についてです。
学生が不安を乗り越え、海外生活で自分の力を最大限に発揮する方法とは?
海外に行けば、自分の予想外の展開になることがあります。価値観の違いは一つの例ですが、留学先の大学で、「思っていたのと違う!」と感じることは少なからずあると思います。
そのような想定外でもアサーティブ・コミュニケーションを使いながら自己表現をしっかりし、充実した生活をおくるコツが「状況創造」と「状況対応」です。
あなたは状況創造、状況対応のどちらが得意ですか?
状況創造、状況対応ということは聞き馴染みがないかもしれません。これはキャリア理論で使われている用語で、自分が置かれた状況をどのように扱うかを分類した言葉です。この二つでは、人によって得意不得意が分かれることがあります。
自分がより得意な方を知っておくことにも利点があります。
- 得意な状況では自信を持つことができます。
- 逆に不得意な状況においては自分の苦手をはっきりさせ、改善しなければならないことを知ることができます。
状況対応は、自分以外によって起こされる偶発的な出来事に対して反応することです。逆に状況創造は、自分の意思によって起こす意図的な行動、選択のことです。
この二つは言葉だけではわかりにくいと思うので、二つの例えでみてみましょう。
- 状況対応
例:
学校のグループワークで、チームメイトが野暮用でプレゼンテーションの準備を終わらせられなかったとします。そこで、自分がその人の分を完成させたり、他のメンバーと話し合って配分を変えたりしました。
- 状況創造
例:
留学先で日本文化を広めたいと思ったとします。しかし、そのような機会や団体が周りにありません。そこで、そのような学校と相談して文化交流フェアを開催しました。
臨機応変に対応することも大切
状況対応、状況創造、片方がより得意だと言う人も多いと思います。
私自身、状況対応の方が得意です。しかし、少しずつですが自分から率先して行動し、コンフォート・ゾーンから出ることを意識しています。そうすることで、自分の新しい部分を発見できる上、苦手に挑戦することに慣れてくると自信に繋がるからです。
予想できなことが多い海外で、さらにアサーティブ・コミュニケーションを通じて価値観の壁を越えるためには、状況に対応するのか、自分から作り出すのかのうち、得意な方を見つけることも大事ですが、臨機応変に両方に挑戦する勇気も大事です。
高校生、大学生のうちに不安を抱えずに海外生活の経験を力に変えるには?
アサーティブ・コミュニケーションや状況対応と状況創造を駆使して生活した留学期間の経験を、しっかり力に変えて未来に活かして行きたいですよね。
そこで出てくるのが「登山型キャリア」と「トレッキング型キャリア」です。
キャリアという言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。狭義に人の職種や仕事柄を指しますが、広く訳すとその人が積み重ねてきた経験、仕事やバックグラウンド全てを含みます。
自分のキャリアの積み方を知っていると、以下のような利点があります。
- 自分に合った目標の立て方がわかる。
- 自分を周りと比べてストレスを溜めなくて済む。
- 自分の今までの行いをより具体的に振り返ることができる。
登山型キャリアとトレッキング型キャリアは、は自分をより理解する道標になってくれます。キャリアの作り方は人それぞれですが、大まかにこの二つに分けられます。
登山型キャリアとトレッキング型キャリアとは?
- 登山型キャリア
意図的に作っていくキャリアのことで、一つの定まった目的に才能とパワーを集中していく方法。
例:
海洋生物の研究をするために、この分野に長けた〇〇大学に進む!
資格をとってコンサルタントになる!
- トレッキング型キャリア
「振り返ってみれば、あの偶然の出来事は役に立った」と言うような、明確な目標は持たず、様々な出来事を乗り越えながら自分を見つけていく方法。
例:
以前は考えもしなかったけど、あの時やったXXが役に立った!
英語を身につけるために留学したけど、教授と研究ができて、科学者になるため大学院に進んだ。
今この記事を読んでくださっている人の中には、留学の目的をしっかり持っている方もいれば、まだ漠然としている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
目標を持っているのと持っていないのでは、大きく違いそうですが、この二つのキャリア形成方法は繋がっています。それは、目標を定めていたとしても、その道のりを振り返ってみると、以前は気づかなかった自分の成長などに気付けるからです。つまり、登山型でキャリアを作っている途中で、トレッキングの方法で知らないうちに新しいスキルを身につけている可能性がある、ということです。私自身、アメリカに初めて行ったときは、英語を学ぶことを目標にしていましたが、振り返ってみると、異文化に触れたことで他国の文化に興味を持てた上、今ではその異文化への興味が発展して、英語以外の言語を学ぶことに挑戦したいと思うようになりました。
ですので、登山型であれ、トレッキング型であれ、時には自分の今までの行動を振り返ってみることが自己理解に繋がります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
見知らぬ土地で生活することには不安が付きまとうものです。
しかし、自分の意見をはっきり言えるようにし、その上で柔軟に出来事に対応したり、時には自分から考えて行動することで、充実した海外生活を送ることができると思います。さらに、その経験を自分のキャリアとして定着できれば、自分を大きく成長させられるでしょう。私も、自己表現に慣れていないときはしどろもどろでしたが、いざ発言したり、意見を曲げずにわかりやすく説明することを意識したりし始めると、だんだんコミュニケーションが楽しくなりました。
留学しようと思ったら、まず自分と向き合って、何が不安か、何を身につけたいか、などを考えながら、自己主張や状況によって柔軟に行動する力を磨いてみてください。
今留学の準備をしている方、留学を考えている方、皆さんが実りのある経験ができることを祈っています。