島国であるフィジーは、17項目あるSDGsの中でも特に海洋資源保護への取組みには力を入れています。
近年は海洋保護区の拡大や生物多様性について体系的に取組んでいますが、過去の積み重なりにより海の豊かさに深刻な影響が表面化していることも確かです。
そしてその影響は、特にビーチやリゾートが魅力であるフィジーの観光事業を直撃します。
これからいかに海の環境を整え、豊かさを将来にわたり保っていくことが出来るかが人々にとっても地球にとっても喫緊の課題となる中で、フィジーがどのような取り組みを行なっているかみてみましょう。
SDGs14: 海の豊かさを守ろう
フィジーはVNR-Voluntary National Reviewというレポートを発行しています。
これは変革をもたらす2030アジェンダとその17のSDGsの実施に関する包括的なレビューが出来るフィジー初のレポートとなっています。
これまで外からは見ることが出来なかった取組みについて、透明性を持って知ることが出来るようになったのです。
この記事では、このフィジーが発行するレポート、VNRのSDG14を読み解いていきましょう。
海の豊かさを守るための目標
フィジー政府はフィジーの中長期開発計画 -5-Year and 20-Year NationalDevelopment Plansおよび2014年のグリーン成長戦略の中で、2021年までに海洋保護区 Marine Protected Areas(MPAs)を30%に到達させるという目標を明示しています。
この目標は愛知ターゲットにおける生物多様性に関するコミットメントを上回る高い目標です。
政府はまた、グリーン成長戦略の中で持続可能な島国と海洋資源を優先エリアに指定し、漁業を持続的に運営できる分野にしていくことを国家開発計画 -Fiji’s National Development Planの中で提案しています。
フィジーは人類が直面する最大の課題に対する提唱者として世界から注目されています。
なぜならフィジーは気候変動、持続的開発と海洋保護の取り組み、海路パートナーシップにおけるリーダー的役割を担うなど世界規模で取組むべき課題に先陣を切って取組んでいるからです。
政府はまた、海洋保護について17もの自発的なコミットメントを登録するなど非常に積極的にこの分野に取り組んでいます。
海の生物多様性
フィジーの海洋生物多様性は、気候変動に関連した要素や人類の活動により常に圧迫されており、多くの生物が危機に瀕しています。
フィジー議会からの2015年の生物多様性報告によると、海洋哺乳類12種中8種、海洋爬虫類10種中3種、海産魚種1,198種中49種、淡水魚種161種中2種が絶滅の危機に瀕しています。
フィジーのサンゴ礁は、堆積物の増加やその他の陸上の汚染源、サイクロンなどの自然災害、海水温の上昇によるストレスにもさらされており、非常に過酷な環境下にあると言えます。
海洋保護と水産業との関わり
水産管理を徹底し、漁業ライセンスを発行・管理し漁獲量をコントロールすることも海洋維持・保護には必要な取組みです。 例えば太平洋マグロ産業だけでも4億米ドル以上の純価値があり巨大です。 一方で水産業がGDP全体に占める割合は、2000年の3.2%から2017年には1.5%となり減少しました。 また同時にフィジーの輸出における漁業のシェアも減少しており、漁獲高の減少は深刻です。 2018年に実施された調査によると、フィジーで観測された39のナガスクジラ種のうち、10が乱獲されてきた、もしくは未だに乱獲されています。 別の事例では世界自然保護基金(WWF)、野生生物保護協会(WCS)の科学者が、180種から16,404匹の魚を評価しました。 その結果、最も一般的に捕獲され販売されている29種のうち、半数以上が長期的に総数を維持していく上で必要な資源を持ち合わせておらず、将来的に減少していくことが分かっています。
海洋保護区域の拡大に向けて
フィジーは、MPA、その他の効果的な地域ベースの管理措置、沿岸保全など、国連海洋法の原則を統合する海洋政策を策定する予定です。 海洋活動への資金は、地球環境ファシリティ、緑の気候基金-Green Climate Fund 、およびこの地域の二国間および多国間資金源を通じて増加しています。 国際法を通じて海洋資源の保全と持続可能な利用を強化することも、海洋が直面しているいくつかの課題を軽減するのに役立っています。 すべての利害関係者が、私たちの貴重な海、海洋資源を保護するために協力し続けることが重要なのです。
海洋保護区域拡大にはデータの活用も欠かすことが出来ません。 太平洋共同体(SPC)は、リアルタイムの波ブイデータを提供するための機器を設置しています。 この機器は、15個の温度センサーと3個の圧力センサー、コーラルコースト(海岸線の60 km)の沿岸ベースラインデータ(Bathy-Topo)に支えられています。 また、正確な測位のための新しいフィジーグローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)と、フィジー海域のデータと監視を進めるための継続運用リファレンスステーション(CORS)も設置しています。 現在、世界クラスの研究施設が長期にわたってデータを監視し、海洋酸性化や富栄養化に関するキットなど、現在フィジーでは利用できないさらに多くの監視ツールキットを収容するチャンスがあります。
海洋上のプラスチック削減
調査と観測は持続可能性と海洋エコシステムと海洋資源の保護をする上で非常に重要な役割を持ちます。
マイクロプラスチックに関する調査は主に南太平洋大学 -the University of the South Pacificで行われています。
調査結果によると、プラスチック繊維を含むマイクロプラスチックは多くの魚種や他の海洋生物の腸から見つかっており、この地域の多くの海洋生物はこの汚染源の影響を受ける可能性があります。
この課題を解決しプラスチック汚染をなくしていくために、フィジーはビニール袋への課金を始めると共に、2020年までに使い捨てビニール袋の使用を禁止する方針です。
課題となっている財政面サポート
政策面では様々な形で海洋保護が促進されている一方で、財政面では大きな変革が必要です。
2011年から2018年までの海洋の政府開発援助(ODA)の合計は約FJ $ 7,036,504(約3.5億円)であり、これはフィジーが受け取ったODAの合計の約1%にすぎません。
地域での海洋保護ネットワーク
2017年の海洋会議をもとに策定された自発的コミットメントへの活動を拡大していくためのコミュニティ -Locally Managed Marine Area Network(LMMA)を強化していく方針です。 LMMAはそれぞれの地域でNGOや政府部門と共に運営されており、海洋維持や保護、資源の持続的な使い方を促進しています。 2013年時点でLMMAは965km2のエリアをカバーし、このメンバーには女性の活躍が目立つことから海洋の持続性において女性の活躍を支援するthe work of The Woomen in Fisheries Networkに表彰されています。
海洋保護と観光業
観光セクターでは、主要な観光開発が行われる前に政府と民間が環境影響評価を確実に実施することに等しくコミットすることが重要です。 既存の観光事業は、最低ラインの遵守をする必要があり、それが最終的には観光分野が依存する天然資源の長期的な保存に貢献していくのです。 このように、海洋、海、海洋資源からの経済的利益は現在および将来の開発が持続可能である場合にのみ持続可能です。
最後に
いかがでしたでしょうか。
この分野ではフィジーが他国を先導するような活発な動きも見られ、非常に力を入れていることが伝わってきたのではないでしょうか。
海洋保全は環境への取組みというだけでなく、漁業や観光業を通じ経済全体にも非常に大きなインパクトを持ちます。
そのため、政府がイニシアティブを取るだけでなく、地域や個人での活動をいかに浸透させ拡大することが出来るかという点も今後非常に重要になってきます。