SDGs|目標12|つくる責任 つかう責任|深刻化するフィジーの廃棄物問題

フィジーの産業と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。

青い海と白い砂浜のイメージ通り、やはり観光業が中心のフィジーですが農村地を中心にサトウキビをはじめとした1次産業も多く残っています。

また近年の急速な経済成長に合わせ雇用が創出される一方で、都市化・人口集中に伴う様々な課題も浮き彫りになってきました。

特に無数の島国から成るという地理的要因からも廃棄物の処理方法が難しく、喫緊の大きな課題と考えられています。

今回の政府発行のレポートには出てきませんが、こうした課題に対し、学校教育から意識改革を行う取組みもありSDGs12に対する課題認識を徐々に広げる活動も行われています。

気候変動リスクと常に隣り合わせの環境、そして急速な工業化の中で様々な課題に直面しつつも、政府は先進的な取り組みも積極的に取り入れつくる責任 つかう責任は人々の意識にも浸透し他国のロールモデルとなるケースも出てきています。

つくる責任については新興国と先進国での論争もしばしば聞かれますが、フィジーはどの様な取組みと実績をあげているのでしょうか。

目次

SDGs12:つくる責任 つかう責任の位置付け

フィジーはVNR-Voluntary National Reviewというレポートを発行しています。

これは変革をもたらす2030アジェンダとその17のSDGsの実施に関する包括的なレビューが出来るフィジー初のレポートとなっています。

これまで外からは見ることが出来なかった取組みについて、透明性を持って知ることが出来るようになったのです。

 フィジーにおいて、つくる責任 つかう責任は、フィジーの人々と環境の双方に対する責任のある項目として国全体で取り組まれています。

モノやサービスの持続的な生産と消費を目指した取り組みとして、フィジーではこの活動を中長期的開発計画 5-Year and 20-Year National Development Plan(NDP)の中でも説明されています。

この記事では、このフィジーが発行するレポート、VNRのSDGs12を読み解いていきましょう。

フィジーにおける4つの重要資源のつくる責任 つかう責任

エネルギー

 フィジーの経済成長はエネルギー需要の拡大をもたらしました。

政府は安全で入手しやすく、環境にも配慮した新しいエネルギー獲得に向かっています。

例えば水力や風力といったエネルギーはその代表例です。

その他にも様々な設備投資がなされてきましたが、特にソーラーパネルの導入については関税の撤廃を含め民間の力も巻き込みながらリーダーシップを取って進めています。

これらの活動の成果は高く評価され、フィジーは欧州の環境基準であるEuro IV standardのベンチマークにも選ばれています。

食糧

 フィジーは国内の食品供給システムの改善、健康的な食習慣と食品安全の確保に向けて活動を推進してきました。

包括的な設備開発、供給システム、例えば郊外の舗装、地方都市市場開拓、冷蔵保存設備、自然災害に強い供給ラインの補強など、これら全てが消費者への食料供給の改善に役立てています。

またこれらの活動は、生産者たちによりもたらされた大切な労働の果実を守り、社会に分け与えていくことに繋がります。

水資源

 安全で清潔な飲水をフィジー中に届けるという取り組みについては、非常に大きな成果が出てきます。

政府は新しい飲料水システムや貯水池の構築のための設備投資を進め、既存設備には定期検査を実施し漏出やロスを防いでいます。

また政府は緑化推進ファンド -Green Climate Fundやアジア開発銀行 -Asian Development Bankからの財政サポートを得ながら都市供水や排水管理を行い、 300,000人以上の人々に安全な飲み水の供給や環境に優しい下水道システムを届けることに成功しています。

廃棄物

 2019年には適切な廃棄物処理を促すために、税優遇策が予算化されました。

例えばNaboroのリサイクル事業の携わる企業には、5年もしくは7年のタックスホリデーが適応されたり、ビジネスを立ち上げる上で必要な全ての原材料、工業機械の輸入に対しては関税が免除されます。

2020年1月からは高密プラスチックバッグ(less than 50 microns thick)が廃止され、低密プラスチックバッグの価格は20セントから50セントに値上げされました。

更には紙や竹のストロー、容器、プレート等の関税も0%に引き下げられており、この様な先進的なアプローチを社会に入れていくことでフィジーは人々の行動を変えていこうとしています。

気候変動リスクとつくる責任 つかう責任

 伝統的な穀物やそのシステムは気候変動に比較的強いと言われています。

しかしながら、食糧生産は気候多様性に対し徐々に脆弱になり、食品の安全や経済にも影響し始めています。

サイクロンや洪水は穀物、森林、農業や漁業に破壊的な影響を及ぼし、直近16年では$791 millionに相当する損失が発生しています。

また、気候変動は海岸侵食や浸水を引き起こし、低地での食糧生産にとって大きな脅威となってきています。

SDGs12への取組みの中でも特に重要なことは持続的消費と生産の考え方を社会に浸透させることです。

消費サイドは消費者意識を変え、サステナブルな行動を習慣化しよりサステナブルな選択が出来るよう変えていく必要があります。


最後に

フィジーのSDGs12への取組みについて

 いかがでしたでしょうか。

つくる責任 つかう責任は、水資源・エネルギー等のSDGsとも密接に関わっており、その分目標を達成することにも非常に意味があります。

人と環境に対する責任を果たすためには、他国とも協調し合いながらエコシステムの構築と意識改革に継続的に取り組む必要がありそうです。

発展途上国がSDGs12に取組む難しさ

一方でSDGs12の内容が他の目標に対する報告よりも文量が少なかったり挿絵もほとんど無かったことから2つの理由を想像しました。

1つは発展途上国の特性として、より基本的な項目への比重が重くなる傾向です。

フィジーにはまだまだ非公式な小さな集落が点在しています。

彼らの最低限の生活を守ること、例えば気候変動リスクへの対応、貧困や飢餓の問題を解決する上で必要なサービス基盤を整えていくことには非常に多くのリソースが投下されています。

人々が安心安全に住むことが出来る環境づくりはこちらの記事にも紹介していますのでご覧ください。

2つ目は物質的豊かさの追求にも目がいく中で、SDGs12を両立することの難しさが背景にあることです。

元来フィジー人の食文化には無かった海外のスナック菓子や缶詰・インスタント食品などの食糧輸入の増加、ファストフードの普及など人々のライフスタイルの急激な変化に対し、廃棄物処理システムはとても追いつきません。

物質的豊かさを確保した上でSDGs12に取組む先進国と、彼らを追いかける発展途上国には大きな違いが見られます。

フィジーも例外ではなく、他の項目でも述べられている通り経済成長を目指す中で都市化が進み、雇用や住居の確保・ライフラインの安定が目の前の課題です。

次回のレポートに期待したいこと

 フィジーの取組みの中にも素晴らしい項目はいくつか見つけることが出来ました。 

今回のレポートを読んで感じたのは、SDGs 12については定量的なデータ・定性的なデータ共にもう少し充実させられたのではということです。

他のSDGsと重複してしまう部分があるのかも知れませんが、市民の意識改革の取組みやプラスチック使用量の削減などは報告すべき内容かと思います。

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