【貧困の次の課題】新興国の新たな健康問題の解決策がSDGs目標達成に不可避な理由

今日はSDGs目標の最も基本的な部分に直結するお話です。

基本的な部分とは、人類が生命を維持していくための目標です。

SDGs目標1「貧困をなくそう」、SDGs目標2「飢餓をゼロに」、SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」を指します。

世界には飢えに苦しむ人が8億人もいると言われており、その割合は9人に1人にのぼると言われています。

でも世界の貧困問題はそれだけではありません。

極度の貧困から抜け出した人たちにとっても、貧困は人々の身体の内側に影響を与え、命の危険にさえ繋がります。

新興国の次の大きな課題、それが「健康問題」です。

例えばフィジーという国を思い浮かべた時、皆さんはどんな暮らしをしている人々を想像するでしょうか。

自然に近いところで生活し、食事は伝統的で健康的な料理が並ぶ食卓でしょうか。

実は全然違うのです。

こちらは世界の肥満率の国別ランキングです。

フィジーはなんと23位、そして他にもオセアニア圏の国々が多くランクインしていることが分かります。

今日はフィジーが現在抱えている、貧困が引き起こす健康問題について、SDGsの視点で深堀りしていきます。

フィジーの貧困の実態を知りたい方はこちらから↓

【SDGs達成は絶望的!?】フィジーが抱える貧困問題の原因を分かりやすく解説

目次

SDGs目標2「飢餓をゼロに」の実態と健康問題

フィジーは他の太平洋諸島と比較しても、食料の入手に問題はありません。

食料安全保障への懸念は低いものの、フィジーの課題は栄養過多と栄養不足の二重苦です

つまり、SDGs目標2の飢餓が課題というよりは、健康の方が問題としては深刻になってきています。

実に成人のフィジー人の3分の1が肥満であり、2型糖尿病などの非感染性疾患の罹患率も高くなっています。

その一方、鉄、ヨウ素、ビタミンA、亜鉛などが不足する微量栄養素の欠乏は一般的で、フィジー人の栄養状態の悪さを表しています。

食料は足りているのに微量栄養素の欠乏による健康問題はなぜ起こるのか

飢餓から脱したことで伝統食品から輸入食品へ

その原因は安価な輸入食品への依存度の高まりと、伝統的な食品の摂取量の減少です

栄養的に不十分な輸入食品が安いという理由だけではありません。

伝統的な食品の多くが輸出用に栽培されているため、特に都市部のフィジー人にとっては価格が上昇しているのです。

昔は健康的な食事をしていたフィジー人も、今では食生活は大きく変わり、50%が毎日米を食べ、43%が毎日ロティを食べ、15%が毎日インスタントラーメンを食べています。

日本や欧米の食生活とほとんど差がなくなっており、ポテトチップスのような加工されたスナック食品の消費も急増しています。

この偏った食生活への急激な変化が、食料は足りているのに微量栄養素の欠乏による健康問題が起こる原因とされています。

気候変動に対する脆弱性

なぜここまで食生活の変化が起きているのでしょうか。

そこには趣向の変化だけではなく、フィジーが最も頭を悩ます気候変動の問題が関係しています。

フィジーにおける農業はここ数十年で着実に衰退しており、これに加えて気候変動に対する脆弱性が農業に与える影響が拡大しています。

フィジーでは暴風雨、サイクロン、洪水、干ばつが頻発しており、農業に壊滅的な打撃を与えています

また、農産物輸出の関税引き下げなどの貿易政策も、国内の農業部門を弱体化させています。

例えば、2016年に発生したサイクロン「ウィルソン」は大きな経済的被害をもたらし、その被害総額はフィジーの国内総生産の20%に相当する約20億フィジードル(13.6億ドル)に達し大きな課題となっています。

このように国内の食糧生産が安定しないことにより、輸入食品に頼らざるを得ない状況にあります。

つまり食糧は足りていますが、構造的に偏った食生活に頼らざるを得ないのです

SDGsと健康問題のボトルネックは非伝染性疾患(NCD)

非伝染性疾患(NCD)の実態

ほとんどのフィジー人はエネルギー量の多い食品を手にしており、国のエネルギー供給は世界平均を上回っています。

つまり、ほとんどの人が日々の基本的なエネルギー需要を満たすのに十分な栄養を確保しているのです

しかしその一方で、エネルギー量の多い加工食品の大量消費により、フィジーでは今、高レベルの栄養過多と非伝染性疾患(NCD)が発生しています。

非伝染性疾患(NCD)とは、がんや糖尿病などの「感染症ではない」疾患を表した言葉です。

ここ数年、カロリーの供給量は着実に増加しています。

1985年には2,819kcal、2006年には3,298kcalだったのに対し、2009年には1人1日あたり平均3,421kcalが入手可能となりました。

食物エネルギーの増加は、肥満率とそれに関連する非伝染性疾患(NCD)の急増を引き起こしているのです

SDGsにおける健康問題と非伝染性疾患(NCD)の位置付け

SDGs目標3の中には、非伝染性疾患(NCD)の原因となる薬物、アルコールの乱用防止・治療と、たばこの規制を強化することも盛り込まれています。

2011年の統計では、フィジー人の成人の肥満率は約32.1%であり、2型糖尿病の有病率は1980年から2倍以上に増加しています。

そして現在フィジーでは、死因の70〜75%がNCDによるものと推定されています。

もはや飢餓や栄養不足で苦しむ人々は少数派なのです

NCDによる死亡原因の内訳を見ると、循環器系の疾患(44%)、内分泌・栄養・代謝系の疾患(13%)、がん(10%)が上位を占めています。

SDGsでは2030年までに、非伝染性疾患(NCD)による若年死亡率を3分の1まで減少させることが目標として掲げられています。

深刻化する糖尿病患者の増加と健康問題

NCDによる死亡の直接的な原因と言われるのが、糖尿病です。

多くの国では糖尿病は早期に発見され、食事療法、運動療法、薬物療法などで管理されています。

しかしフィジーでは早期治療が国民に定着しておらず、手足の切断や、最悪の場合は死が迫るまで病気が発見されないことが多いのです

フィジー政府の保健省によると、フィジーの人口の30%が糖尿病を患っています。

フィジー政府がこの病気に対応するためにかかる費用は年間2440万米ドルにも上るそうです。

これはフィジーだけではなく、太平洋地域では糖尿病患者の割合が非常に高くなる傾向があります。

事実、マーシャル諸島、キリバス、ツバルを筆頭に、太平洋地域の10カ国が糖尿病罹患率の上位20カ国に入っています。

フィジー人の健康問題を解決するには

気候変動といかに上手く付き合うか

フィジーという国自体が、気候変動の影響を受けやすいという事実は変えようがありません

出来ることはいかに上手く対応するかです。

例えば、気候変動に強い農業に投資し、在来作物を促進する動きが活発化しています。

この分野においては、海外の研究チームやパートナーシップを活用することが求められます。

食生活の変化と健康問題には構造的な課題があることがわかりましたが、気候変動に強い農業を育てることが一つの解決策につながるかも知れません

手の届きやすい伝統食の復活

また、国民が健康的な食品を食べる余裕を持てるような包括的な経済開発を促進する必要があります。

伝統的な食文化が薄れている要因の一つはコストの上昇です

今は徐々に変わってきていますが、あまりにも長い間、フィジー人は自分たちの食べ物を誇りに思っていませんでした。

その結果、生産量は減り生産コストが上昇してきました。

しかし、世界ではこれらの多くがスーパーフードとして認められています。

これはフィジーにとって消費と生産を増やす機会になります。

外需、内需を共に促進していくことで、伝統食の消費を活性化し手の届く存在にしていくことが出来るかも知れません。

伝統食が人々の食卓に戻ってくれば、フィジー人の健康問題にも変化が起きるかも知れません。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

食糧が十分にないことは大きな問題ですが、極度の飢餓を脱し食糧があるだけでは解決されない問題がまだまだあります。

その一方で、現在のコロナウイルスの蔓延により、フィジーにはある変化が起きています。

それはフィジーの自給自足文化への回帰です。

経済的に厳しい環境に立たされたフィジー人たちは、自分たちのルーツでもある農業や漁業に立ち返り何とか自国の経済活動を維持しようとしているのです。

フィジー人たちが安全で健康的な食事を手に入れ、持続可能な社会を実現するためのヒントはたくさんあります。

我々SIFも、この課題に対してどのように関わることが出来るのか考えていきます。

良いアイデアをお持ちの方、我々SIFと一緒にフィジーの社会問題に取り組みたいと思って下さった方、ご連絡お待ちしております!

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最後までお付き合い下さりありがとうございました。

参考:

https://www.theguardian.com/world/2020/jun/27/our-diet-is-killing-us-quietly-fijis-diabetes-crisis

https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/11708306

https://www.nutraingredients-asia.com/Article/2018/06/04/Fiji-s-diabetes-epidemic-Nation-already-exceeding-WHO-s-predicted-rate-for-2030#

https://www.indexmundi.com/facts/indicators/SH.STA.DIAB.ZS/rankings

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