【SDGs4】教育問題に真っ向から立ち向かう! | 今の日本に必要な新しい授業の形 | 小野澤信一先生インタビュー

SDGsには目標4「質の高い教育をみんなに」があり、教育は持続可能な社会に向けた重要な分野に位置付けられています。

SDGsで社会問題に取り組む我々SIFも、これからの日本の教育について考えていきたいと思います。

そんな中、今日は都立富士高校の小野澤信一先生をお招きし、日本教育の現状と問題点についてお話頂きました!!

そしてインタビューを通じ、今後は我々SIFと小野澤先生のタッグで日本の教育に対し何が出来るのか、という視点で事業アイデアをまとめていきたいと思います。

書けないこともたくさんお話頂きましたが、”絶対NG”以外は公開してしまいます(笑)

それでは、モノ言う英語教員、小野澤先生の熱血インタビューをお楽しみください!

【プロフィール】

小野澤信一先生 都立富士高校 英語教員

  • ドイツ生まれ、韓国人の父と日本人の母をもつ日韓のハーフ。
  • 小中を日本で過ごし、高校から渡米、現地校を卒業。
  • 大学から日本に戻り、在学中オーストラリアへ短期留学。
  • 多様性が当たり前の環境で育った後に縁あって日本の公教育に従事。

現場で遭遇した昔と全く変わりのない画一的な教育スタイルに強烈な違和感を抱き、教育界にこそ破壊的イノベーションが必要だと考え、現場の最前線で日々孤軍奮闘。4択を当てる受験英語ではなく、自分の意思を力技で伝える格闘英語を生徒に届け、「英語」が理由でナメられない日本人の育成を目指す。

公立高校の英語教員として勤めながら、日本全体の教育問題に先陣を切って真っ向から立ち向かう、まさに教育界のフロントランナー。

目次

日本の学校教育の問題点

まずは小野澤先生が考える、現場に立っているからこそ感じる学校教育の問題点について伺います。小野澤先生の感じる”ヤバさ”とは何なのか、そこから脱出するにはなにが大切かをお話頂きました。

“ヤバいこと”を”ヤバい”と感じられない日本

ーー(川上)小野澤先生から見て、日本の学校教育の問題の本質はどこにあるのでしょうか。

学校関係者全体に言えることですが「外から日本を見る経験が圧倒的に乏しいこと」が課題だと思っています。

私は日本の画一的な考え方や指導法に対する強烈な違和感を感じており、それは学校教育において相当”ヤバい”と感じています。

そしてそれを”ヤバい”と感じている人が少ないことがさらに”ヤバい”。

やはりこの感覚は、実際見た人にしかないと思うんです。

世界を見てくれば自分の基準が広がります。

逆に一度も世界を見た経験がないと、自分の中の判断基準の分母が日本に限られてしまいます。

例えば、日本では食事の時に茶碗を持ちますが、韓国ではおいた状態で食べるのがマナーです。

つまり基準がそれぞれ違うということです。

自分の中に複数の基準を持ち、場面に応じてスイッチ出来る。

それが多角的にものごとを見るための分母だと思います。

フリーライダーではなく、もっと自分を発信してほしい

ーー(川上)分母が広がらないと、どんな問題が起きるのでしょうか?

周りと一緒じゃないと不安に思う人が増えます。

思った瞬間に馬鹿みたいなことを言う生徒が圧倒的に少ない。

例えば授業で生徒に質問をしても、周りを伺ったりして同じ答えを求める。そして”あー良かった皆んなと同じ答えだった危ねぇ”みたいな光景をよく見ます。

「いや、その”危ねぇ”の感覚が一番危ねぇ!」って思うんです。

発言する前に隣の生徒とコソコソ話して相談したりする。これも”あなたの意見”ではありません。

なぜ自分の思ったことを言わないことがよくないかと言うと、自分で自分の可能性を潰してしまうからです。

日本人は自分で自分の壁を作っているように感じます。

日本で完結する素晴らしさ、便利さは分かりますが、逆にそれが外の社会に発信していく上では足かせになります。

言い方悪いですが一生温泉に浸かって終わる、みたいな。ただ、今の世界と日本を見ていると、日本の温泉の栓が抜かれてもうすぐお湯が無くなっちゃう気がするんですよね。

私の感覚では、英語を使わないで得られる情報は100分の1くらい。

私はそれが危険と言うことを知っているので、生徒にも伝えています。

小野澤先生が考える新しい教育現場の形

自分は多様性の中で育ったという小野澤先生。ドイツに生まれ、日韓のハーフでありアメリカの現地教育を受けるという、多様性を体感し続けてきた環境からも、日本との違和感を感じ続けてきました。でも、現場は一足飛びには変わりません。そんな中で、これからはテクノロジーに日本の教育現場を変える可能性を見出しているといいます。

綺麗に揃ってる方がぶっ飛んでない?

ーー(川上)現状の教育への問題意識はどこから来るのでしょうか?

育った環境は要因の一つだと思います。

日本で生まれ育った人から見ると、ドイツ、韓国やアメリカの文化の多様性の中で育った私の価値観は「こいつなんかぶっ飛んでる」と見えるかも知れません。

でも私からすると、「いや、綺麗に横並びにいる日本人の方が逆にぶっ飛んでるよ!」て感じます。

生まれながらにして得た自分の”環境”が、自分の当たり前になる。

でもそれは外に出たら当たり前ではないかも知れない。

今までは日本の当たり前を受け入れるべきか考えたこともありました。

でも、自分の感じる日本の画一的な考え方や指導法に対する強烈な違和感、それを変えたい、日本の教育の常識を破壊するつもりでやってます。

立ちはだかる「受験」という大きな壁

中高の教育の出口に立ちはだかる「受験でのペーパーテスト対策に割く多くの時間」です。

この点について、すぐに変革を起こすのは難しいとは思います。

でも私はもっと、生徒には自分が生きた証や経験値を大切にすることに時間を使って欲しいと思っています。

4択を当てる受験英語だけではなく、自分の意思を力技で伝える”格闘英語”も必要なんです。

どちらかということではなく、あくまでバランスの話です。

予測不能な時代と言われる中で、この点についても変化が必要ではないかと思います。

「明日も分からないのに、なぜ最後の高校3年生の1年は受験に全て捧げるの?」って。

AI×Inputと「探究型学習」で教育問題を打破

ーー(川上)小野澤先生が考える、これからの新しい授業の形はどんな授業でしょうか?

次の攻略はAI×Inputだと思います。

タブレットなどを使ったアダプティブラーニング*が主流になっていくと思います。

AI×Inputで効率化し、空いた時間を社会に直結する「探究」や他のプロジェクトで鍛えていきます。

つまりInputをいかに早く終わらせて、Outputを多くするかが勝負です。

現状のOutputは受験当日の1日だけ。そして社会に出ればクリエイティブを求められる。でも生徒は社会に出る前のOutputの経験が圧倒的に足りません。

だから社会に出てから「クリエイティブな教育なんて受けてませんよ!」となるのは当然です。こんな理不尽なことないですよ。

Outputとは、例えばPBL*を中心にしたチームビルディングから課題発見、解決、探究型学習です。

生徒たちには自分の考えを伝える発信力、そして正解のない問題に対する納得解を見つける力を身につけていって欲しいと思います。

*PBL:Project Based Learningの略。課題解決型学習とも言われ、自ら問題を発見し解決する能力を養うことを目的とした教育法

*アダプティブラーニング:学習者一人ひとりの進捗に最適化な学習方法と教材を選択し、提供する学習サービス

「教える」ではない、教員に求められる新しいスキルとは!?

そこでこれから求められる教員の役割は、ファシリテーター*とキュレーター*だと思っています。ティーチャーはAI。

つまり、InputにおいてもOutputにおいても、いかに一流の情報や人と生徒を結びつけられるかというスキルです。

何でもかんでも教員1人でやる必要はありません。もう教員のカビ臭い”ほこり”を捨てなければいけません。

特にこれからはOutputの部分が大切になっていくと考えています

“この人と繋がっているからこそ実現出来ること”ということがたくさんあります。

「そんな生徒をどれだけ多く自分の授業で生み出せるか」、それが私の提供価値だと思っています。

もちろん何かあれば責任を持ちますが、良いことしか起こらないですよ。

大人が手取り足取り手伝えば”早く正確に”物事が進むと思います。

ただ、求められているのは”早く正確に”ではなく、新たな発見にいたるまでの”プロセス”です。

大人が手を加えることでこのチャンスを奪ってしまします。

ですので、基本は全て生徒に丸投げです笑

*ファシリテーター:組織でものごとを進める際に、進行を円滑に促し中立的な立場から働きかける役割を担う人

*キュレーター:情報収集から編集、そして発信までの役割を担う人

テクノロジーが”教員ガチャ”や教育の不平等から生徒を救う

ーー(川上)SDGsでも子どもたちが質の高い教育を平等に受けられることが求められています。平等な教育とその実現に必要なことは何でしょうか。

これはムズイ問題です‥。

平等な教育と言う意味で意識しているのは、意欲がある生徒に対しては平等であるべきということ。

私は意欲がない生徒の尻を叩いて無理に勉強させるのは間違ってる、という考え方です。

平等の捉え方は難しいですが、テクノロジーには平等な教育に向けた一つの可能性があると思います。

例えば、生徒たちにとって、自分の先生を自分で決めることは出来ず、その年になって初めて自分の教員を知ります。

私はこれを”教員ガチャ”と呼んでいます。

昔は仮に教員と相性が合わなくても、変更は出来ずイヤイヤ授業を受けるしかありませんでした。

でも今はインターネットさえあれば、一流の先生の授業が受けられます。

テクノロジーがこうした生徒の救済措置となり、平等に教育を受けるチャンスが広がるのです。

フロントランナー”Shin Onozawa”が実現する未来の授業

小野澤先生がこれから成し遂げたいことは何なのでしょうか。自分の授業や周りの生徒に対して、どのような学びを提供したいと思っているのか伺いました。

変化を起こし続ける秘訣「タイムマシン戦略」

ーー(川上)小野澤先生とお話した感じは、ベンチャーの社長のような勢いがありました。なぜ都立高校の先生という職業を続けるのでしょうか。

私は二つの理由でこの公立高校の教員の仕事に夢中になっています。

一つ目はこの都立高校教員という特殊な環境です。

学校教育の現場は、一般社会の変化が少し遅れてくる世界だと思っています。

外の社会に対して私立は1周遅れ、公立高校は2周遅れている感覚です。

だからこそ、私は外の社会で起きる最新の変化を敏感に捉えて取り入れる。

すると、教育の現場で大きな変化が起こせる可能性があります。

私は何も新しいことをゼロイチではやっていません。外界の情報を素早く持ってくる。ただこれだけです。

私がやっているのはまさに「タイムマシン戦略」です。

二つ目は自分の夢を実現するためです。

都立高校は約200校あると言われています。

私の夢は破壊的イノベーションで変化を起こして、一つの学校ではなくこの大きな山が動くところを見ることです。

その時に「うわっ、黒船が来た…げっ!小野澤が乗っている…」という感じになりたい。

それが叶えば一生現場でも構わないです。

ーー(川上)コロナで実際に研修にいくことが難しい環境ですが、その中でも子どもたちに体験させたいことは何でしょうか。

オンライン教育に真っ先に取り組んだからこそ見えてきた限界点

オンライン教育を始めて、可能性も見出しましたがある種の限界も感じています。

それは現地にいくことでしか得られない、毛穴レベルの吸収です。

オンラインのおかげで擬似体験ができますが、そこで行った気にならないことが重要です。

私は結局現地に行くことが絶対に必要だと考えます。

行くことを前提に、今できるチャレンジをとにかく実行する。

質問. 小野澤先生が子どもたち、もしくは学校教育を通じて本当に教えたいことは何でしょうか。

「This is 世界」を見せること

生徒たちには自分が経験してきた悔しいことを伝えています。

昔私はある場面で、”He doesn’t speak”と言われました。” He can’t speak English”ではなくですよ。

こんな屈辱はありませんでしたが、悔しがるしかありませんでした。

日本でどれだけ偉くても、ただ英語が出来ないというだけで小学生以下のような扱いを受けます。

それくらい英語が出来ないことのデメリットは大きいんです。

だから私がやりたいのは「舐めらない日本人の育成」です。

どれだけ日本人がものを言えるのか、世界に見せてやりたいんです。

世界に出たら最低限なくてはいけないのは英語、これがないと石ころと一緒。

だから私は1人でも多くの生徒が発信力を身につけ、自分の意見を伝えられる日本人になってくれることを願っています。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

日本の教育問題に真っ向から取り組み、本気で教育を変えたいという熱が伝わったのではないでしょうか。

今回お話頂いた、世界を知り真の発信力を身につける「探究型学習」はこれからますますグローバル化する社会で活躍するには必須だと思います。

でも今はちょうど良いプログラムや教材は揃っていません。

そこで、SIFでは新企画として英会話のプログラムを始動しました!

英語「で」学んで、社会貢献も。オンラインで「直接」インタビュー

まだまだテスト段階ですが、今後議論を重ねて、いつか小野澤先生の目指す「This is 世界」を見せることに繋がればと思っています。

またSIFの活動に少しでも興味を持って頂いた方、一緒に活動してみたいと思った方、まずはご連絡頂ければと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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