海外営業として資格よりも必要な【カルチャーマップとは?】

海外旅行が好き!外国の文化が好き!というあなた!

海外と関わる仕事がしたい!海外出張や駐在をしてみたい!と考えているのではないでしょうか。

私も、学生時代はまさにそのように考えていて、就活は海外営業という職種に絞っていました。

留学経験すらない私でしたが、希望通り、日本の大手重工業メーカで新卒から海外営業を務めることができ、5年間外国のお客様を相手に働いてきました。

しかし、実は、海外営業ってどんなことするのか?どんな資格が必要なのか?よくわからないまま、がむしゃらに就活や仕事を続けてきました。

今回は、そんな私の経験から、海外営業に必要なことについてお伝えします。

海外営業を目指す学生の皆さんや、海外営業として働き始めたばかりのあなたに読んでいただきたい内容です。

私がもう少し早く知っておけば楽だった…と思うことが、皆さんの役に立てば幸いです。

目次

1.海外営業になるためには?必要な資格・能力

まずは、海外営業ってどんなことをしているのでしょうか。

1-1     海外営業とは?仕事内容をご紹介

グローバルにビジネスを展開している商社やメーカにて、海外のお客様やパートナー会社と交流し、市場開拓・販売促進・事業遂行などを行います。

私の場合、アジア(お隣台湾からパキスタンまで)を中心に火力発電所のパーツ販売や検査員派遣を行っていました。

業務内容は、お客様との電話やメール対応や社内調整、時には、販売促進のための海外出張もあります。

1-2     海外営業にマストな資格はない!

海外営業として働くために必ず持っていなければいけない資格はありません。

ただし、あると仕事が楽になる資格は以下の通りです。

①      語学系資格

やはり語学力は、あればあるほど仕事が楽になります。英語以外の第2外国語があれば、その地域のお客様との商談がよりスムーズになります。私の会社では、TOEIC(英語)以外にも、中国語やアラビア語の資格があると加点がされるようになっています。

②      貿易実務検定 (貿易実務検定®|貿易実務のエキスパートの証明 (boujitsu.com))

海外営業の業務に輸出入はつきものなので、貿易実務の知識は重宝します。たいてい、どのメーカでも納期がシビアで、特に輸出入時は時間との勝負です。いちいち通運業社に確認する時間はないので、貿易実務が頭に入っていることは重要です。

③      日商簿記検定(簿記 | 商工会議所の検定試験 (kentei.ne.jp))

海外営業の業務では常にお金のやり取りが発生するので、簿記や経営の知識があると便利です。また、商談中に、即興で値引き価格を算出する(きちんと利益が出るように)ための計算能力が重要だったりします。簿記3級だけでも持っているのといないのとでは大違いと言われたことがあります。

1-3     海外営業に必要な能力

就活時に私が持っていた資格はTOEICとマレーシア語(日常会話レベル)だけでした。それでも、複数のメーカや商社で就活を有利に進められた理由は、異文化理解力を前面に押し出したからだと思っています。

そして、実際それが、資格よりも重要だと考えています。

その異文化理解力について、この章で詳しく解説していきます。

2.      海外営業に必要な異文化理解力

お客様と良い関係を構築することは、商談をまとめるための最低条件です。

なぜなら、仕事は結局人間同士の信頼関係からなるためです。

相手が気持ちよくなる雰囲気を作り出し、気が利く対応ができれば、たとえ条件が悪くてもお客様は歩み寄ろうとしてくれます。

しかし、これは各文化によって違う対応が必要になります。日本人の「空気が読める」は外国では通用しない場合があるのです。そのため、海外と関わる仕事をする前にまず、“カルチャーマップ”を確認することが必須です。

2-1 海外営業が確認すべき”カルチャーマップ”とは?

カルチャーマップとは、INSEAD(世界ランキング首位のMBAスクールMasters & Executive Education Programmes | INSEAD)客員教授であるアメリカ人、エリン・メイヤーが提唱した異文化理解のためのツールです。

以下8つのマネジメント領域を縦軸に、各領域における両極端の特徴を横軸に置いた文化の“見取り図”です。

2-2 ローコンテキストとハイコンテキスト(コミュニケーション)

まずは、コミュニケーションの指標を見てみましょう。両極端にローコンテキストとハイコンテクストと書かれています。コンテクストとは、文脈や背景という意味ですが、それぞれの意味は以下の通りです。

①    ローコンテクスト

はっきりと意見を口にし、メッセージの背景知識や詳細をすべて明確に伝え、額面通りに受け取る。

②    ハイコンテクスト

ほのめかして伝えることが多く、メッセージは行間で伝え、行間で受け取る。

KY(空気読めない)という言葉がある通り、日本はカルチャーマップにおいて、最も②ハイコンテキスト寄りの文化を持ちます。

一方、最も①ローコンテキストな文化であるアメリカは、明確で曖昧さの無いコミュニケーションが好まれます。

なぜなら、日本は、単一国家の島国で、鎖国を経験しており、人々は互いのメッセージを読み取る能力が必要だったためです。一方、アメリカは、世界各国からの移民で成り立っており、それぞれが共通のコンテクストをほとんど持っていないため、曖昧さや誤解が生じる余地をなくす必要があったのです。

海外営業としての代表的な仕事として、海外の顧客やパートナーとの会議が挙げられます。仮に、ハイコンテクストの日本人と、ローコンテクストのアメリカ人が、お互いの文化を尊重しなければ何が起こるでしょうか。

含みを持った日本人の発言に対し、アメリカ人は要点が分からずすぐに飽きてしまうかもしれません。一生懸命理解しようとしたアメリカ人が、何度も質問することで日本人スピーカーが気を悪くするかもしれません。一方、アメリカ人のプレゼンテーションを日本のハイコンテクストな態度で聞いていては、相手が意図しないメッセージまで受け取っているかもしれないのです。

2-3 海外営業が抑えるべき議事録やメールの書き方

海外営業と聞くと、海外出張や交渉など華やかな仕事内容を想像するかもしれませんが、実際は、議事録やメール作成等の地味な仕事がほとんどです。ただし、この地味な作業でも、海外営業は国内営業以上に気を付ける点があります。

海外営業が作成する文章は、常にローコンテクストとハイコンテクストのメンバー両方から読まれることを意識して 書く必要があります。

通常、ローコンテクストに合わせて、シンプルに明文化することが重要です。なぜなら、多文化チーム内の混乱と時間ロスを避けられるからです。例えば、結論を述べてから箇条書きでポイントを羅列するのです。

 ただし、ハイコンテクストメンバーのケアとして、明文化する理由を事前に説明すると親切です。例えば、「会議不参加の方にも分かるように、アクション事項は議事録で明記して後ほど配信します」とさらっと伝えておくのです。会議で決めたアクション事項と担当者を、議事録で明文化すると、ハイコンテクストの人々の中には「やるって言ったのに。私を信じられないということ?」という思いをすることがあるからです。

3.      海外営業にカルチャーマップの理解は不要?

ここにきて、あなたは疑問を持つかもしれません。

「同じ日本人で、同じ大学に所属している友人ですら異なる性格を持つのに、国や文化で特徴を決めつけるべきではないのではないか?」

3-1 カルチャーマップの理解は”ステレオタイプ”ではなく”海外営業に必須の教養”

確かに、人はみな違います。いくら同じ環境で暮らしていても、私たちはみな独自の好みや文化を持っています。

そのため、文化的背景から相手の行動や考え方を決めつけるべきではなく、常にその人個人の特別な部分に気付こうとすべきです。

カルチャーマップの考案者エリン・メイヤーもその点に触れながらも、やはり、外国人と関わる仕事をする場合、異文化理解力は“必須の教養”であると指摘しています。

3-2 “個人の違いOR文化の違い”ではなく“個人の違いAND文化の違い”

同じカルチャーの中ですら個人は異なっていますが、それでもなお、カルチャーマップの理解は重要なのです。なぜなら、私たちの育った文化は私たちの世界観に深い影響を与えているためです。各文化には幅があり、各個人はその幅の中で選択を行うのだと彼女は言及しています。

少なくとも、初対面の異文化を持つ方と接するときは、カルチャーマップの理解が重要です。

なぜなら、大きな間違いをする確立を最小限にしてくれるからです。

例えば、直接的なネガティブフィードバックを行う文化の上司が、間接的なネガティブフィードバックを行う文化を持つ部下に対し、相手の文化を知らずに批判を伝えたらどうなるでしょうか。

大人数の前で直接的なネガティブフィードバックを受けたその社員は、辱められたと感じ、悩んでしまうかもしれません。個人の性格を知らなくても、少なくとも相手の文化を知っていれば、まずは個人的に話をしてみるという選択をすることができるはずです。

4.      カルチャーマップの理解がなぜ海外営業に必要なのか

さらにカルチャーマップの重要性を理解していただくために、私が日系企業で海外営業として働いていた際の具体例を挙げていきます。

カルチャーマップの理解は、異文化と関わるときだけでなく、独特な文化を持つ日本社会で働く際にも、あなたを助けてくれることが分かると思います。

今回は、カルチャーマップの8つの指標の中から、3つを取り上げてみます。

4-1 日本の”気が利く”海外営業とは (敬意)平等主義的 vs 階層主義的

まず初めに、敬意の払い方について、文化による違いを見ていきましょう。

デンマーク・スウェーデンなどのスカンジナビアやオランダは、平等主義的と言われ、上司と部下の距離が近いことが理想とされます。座席配置も見た目(服装や通勤手段)も平等がよいとされます。

一方、日本や韓国は、階層主義的と言われ、上司と部下の距離は遠く、上司の判断はたとえ間違っていても尊重されるべきです。このような国では、上司は個室を持ち、ドライバー付きの高級車できちんとしたスーツを着ることが常識とされることがあります。

これらの起源は、歴史や宗教から説明ができます。例えば、スカンジナビア発祥のヴァイキングは世界で最初に民主主義を取り入れたと言われています。また、プロテスタントでは、信徒は神父や司祭や法王を通してではなく直接神と対話するため、カトリックより平等主義的と言われています。

一方、アジアが階層主義的なのは、孔子の思想に影響を受けています。彼は、誰もが自らの社会的身分をわきまえて適切な行動をすれば調和を保つことができると説きました。

私は、“気が利く”メールが打てるようになるまで、または、“気が利く”会議や飲み会をセッティングできるようになるまで、上司に何度か注意を受けたことがあります。

こってこての日系企業で働いていた私は、常に組織図を認識しておくことが求められました。他部署に社内メールを打つ際、平社員の私は、違う部署の部長にメールを打つことは許されませんし、自分より下の相手にメールを送る場合、相手の上司もCCに入れなければいけません。

会議や飲み会のセッティングでは、事前に相手側の参加者を確認し、それに見合った階級の参加者に同席してもらう必要があります。

このルールを破ると、“無礼な”“使えない”社員と認識されるので、いつも細心の注意を払っていました。

しかし、平等主義的な文化の相手にメールを打つとき、もし相手の上司をCCに入れると、信頼されていないとか迷惑をかけようとしていると思われることがあります。

私が”社会人の常識”として教え込まれたマナーは、カルチャーマップで見れば当然ではないのです。

上司に「気が利かない」と指摘されたとき、このことに気付いていたら、その状況を客観的に見ることができて、あれほど落ち込まずに済んだのではないかと思います。

4-2 海外営業だから気付く”稟議”は独特な文化(決断)合意志向 vsトップダウン式

次に、決断の仕方を見てみましょう。

中国は、上司が一人で決断を行うトップダウン式をとります。

一方、日本では、決断は全員の合意の上で行われます。

一般的に、4-1で見た階層主義に位置する多くの国では、トップダウン式の意思決定がなされますが、日本はその型から逸脱しており、階層主義かつ超合意主義です。

その独特な文化を象徴するのが、”稟議”という提案書の回覧システムです。組織図の下から順に全員のハンコが押され、最高決定者のハンコが押された場合は、その決定はなかなか覆すことができません。ご想像の通り、決定までに大変時間がかかりますが、一度決まった後は、全員が同じ方を向いているため、実行まですぐに進みます。

また、この日本文化の中では、提案書を承認する前に、非公式に会合をもって合意を形成する”根回し”が重要です。

私も、大事な結論を出す必要がある会議を開催する前には、参加者全員に会いに行き、自分の意見を伝え、会議で賛同してもらえるよう“根回し”をしています。これは、営業として上司に叩き込まれた技の一つです。

一方、アメリカもこの点において、独特な文化を持っています。平等主義に位置しながら、トップダウン式の意思決定を行うのです。

これは、アメリカの開拓者たちが、成功のために誰よりも早く着いて懸命に働くことが重要であったという歴史から来ています。スピードを追求する上でのある程度の失敗はやむを得ないものと考えており、一人の人間によって素早く決断され、決断はすべて変更可能なものとされています。

アメリカ人から見ると、日本人は、決断までの時間が長すぎるし、決定に固執し過ぎだと考えます。世界は動いていて、物事は変わっていくのだから、柔軟に決断しなければ、競争に勝てないというのがアメリカ人の考え方なのです。

4-3 「ちょっと挨拶」の出張は海外営業の重要な仕事(信頼)認知的 vs 感情的

最後に、信頼の項目を見ていきたいと思います。

アメリカやスイスは認知的信頼に位置し、信頼はビジネス上のやり取りを通して形成されます。

一方、中国やブラジルは、感情的信頼に位置し、仕事は人との関係によって成り立つと考えています。

感情的信頼に位置する国々では、知らない人からのメールに返信しないことすらあります。可能であれば、信頼を築くためだけに海外出張に行く必要もあるのです。直接会うことが難しい場合は、少なくとも電話で関係を築くことが重要です。

日本も中国ほどではないですが、感情的信頼に位置しています。私も、できる限り、メールを打つ前に電話をするように、電話をする前に会いに行くように、心がけています。時間の無駄と感じるかもしれませんが、関係を築いた後の仕事はとてもスムーズで気持ちいいものです。

「ちょっと挨拶」のための出張はお金も時間もかかりますが、そのあとの商談を成功させるための重要な投資になるのです。

そう考えると、上司との飲み会も以前より有意義に感じるのではないでしょうか。私もかつては、毎日寝る間も惜しんで働いているのに、仕事終わりに上司に気を遣いながらお酒を飲むなんて勘弁してくれ、と思うことがよくありました。

しかし、日本社会において、仕事は人なのです。飲み会の場は、互いのことを知る絶好の機会であり、今後あなたが失敗したときの味方を増やせる、投資の場面なのです。

5.      さいごに

いかがでしたでしょうか。

海外営業にとって、カルチャーマップを使って異文化を理解することがどれだけ重要かご理解いただけたでしょうか。

もちろん、ステレオタイプにとらわれずにその人個人の独特な部分を理解しようとする姿勢を忘れてはいけません。

しかし、その前にカルチャーマップを理解することで、大きな失敗をすることや、あなた自身が不快な思いをする確率を大幅に減らすことができるのです。

そうはいっても、カルチャーマップのマスターになる必要はありません。異文化との交流がある前日に、少しカルチャーマップを眺めておくだけでいいのです。

さらに、カルチャーマップは、独特な日本社会で働いていく上でも、自分の文化を客観的に捉えることはあなたのストレスを軽減してくれるかもしれません。

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