世界のSDGsを知ろう-気候変動対策における先進国フィジーの取り組み(概要編)

皆さんは日本以外の国がどのようにSDGsに取り組んでいるか調べたことがあるでしょうか。

新型コロナウイルスが世界に広がり国にも企業にも個人にも社会にどのような価値提供ができるかがより一層深く問われています。

これからグローバルに活躍したいと思っている方にとってSDGsを世界基準で考えていくことが必須の考え方になっていくと考えられます。

その一方で、海外のレポートは英語だったり膨大なことがほとんどなためなかなか読む時間も取れないと思います。

この記事を読んで頂ければ、日本のSDGsなについて既に学び取り組んでいる人、SDGsをこれから学ぶ人も他の国と日本を比較することでよりSDGsを深く理解することができます。

 今回ご紹介するフィジーもまた、自国の特性を踏まえSDGsを独自の考え方で捉え国全体で取り組もうとしています。

特にフィジー流のSDGs3階層の考え方、誰も取り残さないための項目は非常にユニークで必見です。

フィジーにとっての最大の悩みは気候変動の影響、そして災害リスクです。

他のどの国よりも気候変動の影響を敏感に受けるが故に、気候変動対策には非常に力を入れており2017年には国際気候交渉COP23の議長に就任するなど国際的なロールモデルとされる程です。

その一方でフィジーはまだ経済的には小規模であり脆弱な発展途上の島国という一面もあり、先進諸国に比べるとゴール達成にはもう少し時間がかかりそうな項目も見受けられます。

この記事はこんな人にオススメです!

  • 海外のSDGsについて知りたいけどレポートを読んでいる時間はない方
  • 海外と日本のSDGsへの取り組みの違いを理解したい方
  • フィジーのSDGsへの取り組みに興味がある方
  • 英語が苦手なので海外のSDGsレポートは読みたくない方
目次

気候変動対策を上位に置いたSDGs全体構想

相互補完で取り組むフィジーのSDGsと国政

 フィジー政府は経済成長、気候変動対策、災害リスク低減、環境保全のそれぞれは密接に関わっており、これらを相互に関連し合う一連のシステムとして捉えた取り組みをすべきであると考えています。

そしてそのためには、システムの改善、連携強化、多岐にわたる様々なステークホルダーとの協業、戦略実行力や事実に基づいた意思決定力の強化、各分野が共通の目的・利得を目指すといったことが必要になってきます。

 国家変革政策-Natinal Change Policy(NCCP)は、SDGs達成に向け相互補完的なアプローチを取ろうとしています。

例えばフィジーでは気候変動への脆弱性はSDGsの活動継続に対する大きな脅威になり得ます。

フィジー政府はグルーバルそして国内の気候変動対策へのコミットメントこそが、SDGsの目標達成に向けた重要なファクターであると捉え、SDGs13(気候変動に具体的な対策を)のレンズを通じてそれぞれのSDGsの関連性を考えていくアプローチでSDGs達成に向けて取り組もうとしています。

3階層で取り組むフィジー流のSDGs

 ではSDGs13を入り口として、他のSDGsの14項目は具体的にどのように関連していると捉えているのでしょうか。

下の図を最初にご覧になるとイメージがつきやすいと思います。

まずSDGs5(ジェンダー平等を実現しよう) 、SDGs16(平和と公正を全ての人に)、 SDGs17(パートナーシップで目標を達成しよう)、SDGs9(産業と技術革新の基盤をつくろう)が全ての基盤となります。

この4つが支えているのは、基本的サービスであるSDGs1(貧困をなくそう), SDGs2(飢餓をゼロ), SDGs4(質の高い教育をみんなに), SDGs6(安全な水とトイレを世界中に), SDGs7(エネルギーをみんなに そしてクリーンに)、そしてエコシステムの保護であるSDGs14(海の豊かさを守ろう), SDGs15(陸の豊かさも守ろう)です。

その上でこれらを実現しようとする活動が長期的な健康福祉や強固な経済、そしてSDGs3(すべての人に健康と福祉を)、SDGs8(働きがいも経済成長も)SDGs11(住み続けられるまちづくりを)SDGs12(つくる責任 つかう責任)に繋がっていきます。そしてそれら全てが、SDGs10(人や国の不平等をなくそう)という究極的な目標に向かっています。

これがフィジー流のSDGs17項目の関連性の考え方です。

Voluntary National Review(VNR)VOLUNTARY NATIONAL REVIEW

気候変動への取り組みを始めとするSDGsの見える化

フィジー初の全国的レビュー VNRとは?

 フィジーのVNRは2030アジェンダを達成するための私たちの国の状況とコミットメントを反映し、同時にSDGsの17の目標も包括的にレビュー出来るレポートとなっています。

このVNRの作成は2018年3月の国際連合経済社会理事会-Economic and Social Council(ECOSOS)の理事長からの正式な通達を受けたことから始まっています。

この通達を受けフィジーは2019年のECOSOSが催すフォーラム(high-level political forum)において、VNRを表明して欲しいという要望を受け入れることになりました。

VNRの開発を主導したのは国家開発計画、ひいては持続可能な開発アジェンダを担当する中央政府機関である経済省です。

VNRの開発は、詳細なデータと情報のレビュー演習から始まり、その後、さまざまなプラットフォームを介した包括的な利害関係者の協議プロセスが続きました。

 2018年中頃からデータ収集に取り掛かり、ベースラインデータ収集作業には政府機関、非政府組織(NGO)、学界内で利用可能な定性的および定量的二次データのデスクトップレビューによるベースラインデータ収集とベースラインデータ評価、および政府機関とNGOとの協議を続けました。

このように、VNRの発行までにはフィジー政府だけでなく様々な分野の人々が長い時間をかけて関わってきたのです。

フィジーの中長期開発計画とSDGsへの取り組み

 2017年にフィジー政府はこれから先の変革のビジョンとして、中長期開発計画-5-Year & 20-Year National Development Plans(NDP)を作成しています。

NDPはフィジーの2つの大きな戦略実現を目指したものです。

  • フィジーの更なる生活水準向上を目指した包括的な社会経済の発展
  • フィジーの地理・社会基盤・制度上の利点を活かし南太平洋諸国の中心的存在となる

NDPとは言わば2030年以降までフィジーが南太平洋諸国を代表する継続的に開発する国家となるための青写真です。

そしてこのNDPの様々なテーマがSDGsと密接に関わっており、SDGsとNDPはまさに両輪の存在としてグローバル目標と国としての目標がうまく相関しているのです。

誰も取り残されないための取り組み9項目

 2015年に国連加盟国が2030アジェンダを採択したことは画期的な成果であり、すべての人々に持続可能な開発に向けた共通のグローバルビジョンを提供しました。

アジェンダとそのSDGsは、貧困を根絶し、2030年までに世界中で持続可能な開発を達成し、誰も取り残されないようにするという以下のコミットメントを表明しています。

気候変動への取り組み

 気候変動がフィジーのような小さな島の発展途上国に与える影響は広大で、広範囲に及んでいます。

一方でその経済的地位、脆弱性、規模にもかかわらず、フィジーは世界的な気候変動対策の最前線にいます。

2017年、フィジーは国際気候交渉COP23の議長に就任し、このグローバルプラットフォームにおいて、多くの小島嶼開発途上国が直面している気候変動の現実に光を当てました。

それ以来、フィジーは気候変動対策の世界的な提唱者であり続けています。

フィジーのグローバルなリーダーシップは、気候変動の壊滅的な現実に対処するという地域および地域の取り組みに基づいています。

フィジーでは、海面上昇などの影響が低地のコミュニティに侵入し、その結果、沿岸地域や集落をより安全な地域に移す必要性が高まっています。

また、フィジーの世界的な温室効果ガス排出量はごくわずかですが、フィジーはよりクリーンで再生可能なエネルギーにシフトする活動を続けています。

障害のある人向けのインクルーシブな開発

障害を持つフィジー人のためのプログラムと政策は誰も置き去りにしないというフィジー政府の公約を真に反映する分野です。

フィジーは障害者のための包括的な法律を制定している太平洋の2か国のうちの1つとなっています。

障害のある人にとって、彼らの福祉の重要な要素は介護です。

個人および家族が家族内および地域社会内で障害のある人の世話をする能力を高めるために、女性、子供および貧困緩和省はオーストラリア太平洋訓練連合と提携して地域社会で介護技能訓練を実施し、これまでに285人のフィジー人が訓練を受けました。

フィジー政府が資金提供し、障害者に力を与えるその他のイニシアチブには、障害月額手当プログラム、経済的エンパワーメントプログラム、障害者にサービスを提供する組織への助成金、障害のある学生が利用できる20のフルタイム奨学金、年間予算手当が含まれます。

女性・少女の差別をなくす取り組み

 フィジーにおける女性と少女に対する差別の割合は年々減少していますが、さまざまな形態のジェンダーの不平等が多くの女性と少女を抑制し続け、基本的な権利と機会を奪い、意思決定分野への参加を制限しています。

国連女性差別撤廃条約(CEDAW)、フィジー国家ジェンダー政策、フィジー憲法を通じてジェンダーの不平等をなくす取り組みを推進しています。

またジェンダー平等、人権、暴力が発生したときに提供される法律とサービスについてフィジーの人々に教育するための継続的な取り組みを確実にするために、さまざまなコミュニティ組織が協力してコミュニティ意識向上セッションを強化しています。

デジタルデバイドの橋渡し

 フィジーのICTは近年急速にアクセスしやすさが改善しています。

このICTセクターの発展によりフィジーの人々の生活に新たな機会がもたらされており、ICTはSDGsの実現に不可欠です。

フィジー政府は、太平洋で最初にブロードバンドポリシーを実装したことにより、国はICTサービスのモバイルブロードバンド普及率95%を達成しました。

フィジーはまた4Gスペクトルを競売にかける最初の太平洋島嶼国であり、放送の分野でも大きな進歩を遂げてきました。

教育分野の開発にとってもICTは欠かすことができず、インターネットの速度が速いということは学校がまったく新しい方法でデジタル学習に取り組むことができることを意味します。

つまり、より多くの生徒がオンラインでクラスメートやその他の国と交流できるようになり、北部の最も遠隔地にいる生徒や教師にとっても信頼できるコミュニケーションを確立しました。

アイデンティティの尊重

 平等な市民と機会の基盤は、すべての市民を「フィジー人」として確立した2013年のフィジー憲法によって確立されました。

フィジーの人々が共有する共通のアイデンティティと平等な市民は、すべての市民が卓越し、正義、透明性、優れた統治を促進できる公平な競争の場を作り出しています。

包括的な基本的人権の尊重

 フィジー憲法はフィジーの歴史上初めて市民的、政治的、社会経済的権利を支持するものです。

それは法律により、すべてのフィジー人のためにこれらの基本的権利を前進させ、保護し、そして漸進的に実現することを国に義務付けるものとして重要な役割を担っています。

政策立案に誰も取り残さない

 政府の機構を通じて変革的な開発アジェンダを提供する際には、すべての利害関係者が政策策定プロセスで協議されることが不可欠です。

政策策定はすべてのフィジー人のニーズと願望を満たしている必要があります。

たとえば、NDPは、フィジーの歴史では前例のない包括的な協議プロセスを通じて策定されました。

同様にフィジー政府は国家予算の準備中に、対面およびオンラインのパブリックコンサルテーションを行っています。

政府はフィジー人が開発、成長、繁栄のために貴重な情報を提供し続けることができるように、この全国的な会話にすべてのフィジー人を集めることが重要であると信じています。

政策を持続的行動に紐づける取り組み

 フィジー政府はすべてのフィジー人、特に最も脆弱な人々の経済的および社会的繁栄を確保するため、さまざまな社会的、経済的なインフラ開発プログラムに着手しました。

政府はインフラ開発と近代化の計画に重点を置いており、フィジーのコミュニティ間および世界の他の地域との連携を改善するだけでなく、市場やサービスからの隔離という根深い課題に取り組んでいます。

例えばフィジー政府の無料の教育制度は、将来のすべてのフィジー人に必要なエンパワーメント、スキル、知識を注入して進歩させる教育社会に重点が置かれています。

この教育制度は将来的にはすべてのフィジー人に教育を達成するための平等な機会とアクセス可能性が与えられることを可能にするはずです。

無料の教育、交通機関の支援、無料の教科書などの政策は、教育を利用しやすくするための改革イニシアチブの一部です。

包括的かつ広範な社会保護

フィジー政府の貧困給付制度、介護保護手当、社会年金制度、その他のセーフティネットによりフィジーの貧困は着実に減少しており、極度の貧困はまれにしか見られません。

無料の水、補助金付きの電気、無償教育、無償医療などは、多くのフィジーの家族の費用負担を軽減することに役立っています。

最後に

 いかがでしたでしょうか。

ここまで気候変動対策を上位に置いてSDGsを考える国は珍しく、この分野においてフィジーは世界のリーダー的存在になろうとしています。

それはフィジーが過去に経験したたくさんの犠牲のもとに生まれ、フィジー人の経済・生活を守り未来をつくっていくための重要項目として国民全体の意識が非常に高いことに繋がっています。

SDGs17項目の取り組みについてはそれぞれ解説していますので、そちらも是非ご覧ください!

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